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安ヵ川大樹 <ベーシスト>

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「ファー・イースト・ジャズ・アンサンブル」での活躍はもちろん、数多くのミュージシャンとの共演、ソロベースまで多彩かつ精力的に活動を続ける今一番注目のベーシスト!
安ヵ川大樹氏にニューアルバム、今後の活動などについてお話を伺いました。



僕も一度は企業に就職したんですよ。プロになる度胸があまりなかったというか、見切れなかったというか。 でも、ある日「バキンっ」と自分はプロでやるべきだと思ったんですよ。それで1年で会社を辞めて再び上京したんです。
(安ヵ川大樹)



● それでは、まず音楽、ジャズとの出会いをお聞かせください。

最初は6歳から始めたクラシックピアノのレッスンですね。ジャズは両親が好きだったのでいわゆるスイングジャズやビッグバンドのレコードがたくさんあったんです。
いつも流れていたというわけではないのですが、耳にするうちに自分から聴くようになり、自然と音楽、ジャズが好きになっていったという感じですね。そのころはオスカー・ピーターソンやビル・エバンスが好きでよく聴いていました。
楽器はいろいろとやりたくて、高校の時はギターを弾いてましたし、ベースは大学に入ってから始めました。大学に入ったら音楽系のクラブに入りたいと思っていて最初は吹奏楽部でトランペットを始めたんです。でもやっぱりジャズがやりたくてその年の夏には、ビッグバンドに転部しました。でもトランペットはたくさんいたので「ベースを弾け」と(笑)。

● なるほど、意外なベースとの出会いですね。どのようなかたに師事されたのですか?

最初は牧島さん(故 牧島克彦氏)、それから吉野弘志さん、吉田秀さん(N饗の首席コントラバス奏者)から個人レッスンを受けました。その時はクラシックのトレーニングですね。特に吉田さんは、今でもレッスンして頂いています。ですから、大学時代はレッスンでクラシックを大学でジャズをという感じでした。

● 特に影響を受けたベーシスト、アーティストは誰ですか?
やはり、高校生の頃に聴いたレッド・ガーランドのアルバム「グルーヴィー」でのポール・チェンバース、オスカー・ピーターソントリオのレイ・ブラウン、この二人が僕のジャズベースの原体験ですね。

● エレクトリックベースは弾かれないのですか。

大学2年の時に1年間、日大のリズムソサエティでベースを弾いていたのですが、このときはエレキベースだけでした。エレキギターを弾いていたこともあり、すんなり入れましたし楽しめました。

● 山野ビッグバンドコンテストで優勝されていますが、この事はその後の活動に影響しましたか。

初優勝でしたから非常に嬉しかったことを覚えています。でも、このことが直接プロ活動に繋がったということはありませんでした。

● では、プロになろうと決心したきっかけ、タイミングはどのようなものでしたか?

僕が大学を卒業するころは、卒業したら一般の企業に勤めるのが普通という社会の風潮というか雰囲気があったんですね。プロになるハードルが高かったというか。
僕も一度は企業に就職したんですよ。プロになる度胸があまりなかったというか、見切れなかったというか。
でも、ある日「バキンっ!」と自分はプロでやるべきだと思ったんですよ。それで1年で会社を辞めて再び上京したんです。
最初は当時赤坂近辺には「クラブ」がけっこうあって、接待等で使われるようなお店にバンドが入ってたんです。ですからそこで週何回か演奏してバイトしてという生活でしたね。そのころは若いということもあり、とにかくがむしゃらにやってました。ジャズから離れたところでも、とにかくベースを弾いてました。

● プロとして第一線でご活躍中ですが、現在はどれくらい練習されるのですか?

時間では考えないですね。弾ける時、弾こうと思うときに時間を考えずに練習します。さすがに、ステージ前にそれはできないですけども(笑)。

● 安ヵ川さんのベースは音色も魅力の一つだと思いますがこだわりはありますか?

良い音色は一足飛びには作ることは出来ないと思っています。基本姿勢、例えば足の置き方とか背筋の伸ばし方だとかそういった基本の積み上げで良い音色が生まれると考えています。楽器は、銘器であればあるほど良いのかもしれませんが、僕はそれよりセッティング、きちんと調整をやることを心がけています。弦楽器にはコントラバスに限らず表板と裏板を繋ぐ柱(魂柱)の調整が非常に重要で、その時の気候、湿度などの環境によってしっかり調整しないと楽器が鳴らないんですね。僕はなじみの専門店さんで必ず定期的に調整してもらってます。

● 作曲やアレンジはどのようになさっているのですか

作曲もアレンジもピアノですね。鍵盤楽器は視覚的にどの音を弾いているのかが分かりやすいので、いつもピアノを使っています。

● 安ヵ川さんは一昨年「D-musica」レーベルというレーベルを立ち上げられました。レーベルを起こすきっかけ、これから目指すものをお聞かせください。

レーベルの作品第一弾の高田ひろ子さん、第2弾の村山浩さんのレコーディングにはもともとサイドメンとして参加していたんです。素晴らしい作品になったのにうまく流通させる機能が無い、自主制作として出すことも可能ではあったのですが、良い作品が出来ても発表する場が限られているという状況を何とかしたかったんです。自分でもベースソロアルバム第2弾を制作したいと思っていましたし。
現在、日本国内ではジャズという音楽の市場は決して大きくはありません。ヴィジュアル面、話題性とか何かフックが無いと流通に乗りづらい状況だというのは僕も周りの人間も感じていました。そんな中で質の高い作品をうまく流通に乗せたい、そう考えました。ですから、演奏はもちろん、パッケージもジャケットにしてもプレスにしても安ければいいってものじゃなくて、今後何十年でも作品として世に残るものを出していきたいと考えています。今はこれだけダウンロード市場が拡大していますから、パッケージとして質の高いものをリスナーに提供できなければ意味が無いと思うんです。 僕は自分が参加していない作品もどんどんリリースしていきたいですし、 海外のディストリビューターとの提携も積極的にやっていこうと思っています。そこでフランス、パリにある「インテグラル・ディストリビューション」というディストリビューターと提携しています。日本にこのようなレーベルがあるということを発信していきたいし、これをきっかけにヨーロッパとの架け橋になれれば良いなと考えています。もちろんリスクはありますが、僕のやろうとしている事に賛同してくれる方も増えてきているので、この考え方を貫いていきたいですね。

● 話題は変わりますが、プロを目指すアマチュアや伸び悩んでるアマチュアの方へのアドバイスをいただけますか?

大まかに言えば努力や才能よりも熱意、情熱ということですね。もう少し具体的に言うと常に楽器のことを考えること、練習時間が無いということでネガティブになるよりも、「今日はこれだけ楽器のことを考えていたんだから良し!」とするくらいポジティブな姿勢が大事だと思います。焦りやほかの人と較べてしまうというようなことは当然あると思います。でも自信と誇りを持つ事が大事。やりたくないことをする必要はないと思います。音楽と言うのはアートですから自分が良いと思うものを発信しなくてはいけないわけで、自分が一番良いと思うものをやるべきだと思います。やりたくないと思っている、受け入れられない音楽をやる必要はない、やりたいことをやればいい。それが熱意に繋がっていくと思います。ただその「やりたいこと」の間口は広いほうがいいかもしれません。僕はどんな音楽でもベースが弾ければ楽しいと思っていますよ。
練習方法としては、悩んだらまず基礎練習、メトロノームかけてストイックなスケール練習、分散和音の練習がやはり大事ですね。あれこれ考えている時間があれば、その分基礎練習をやったほうがいいと思います。確実に上達しますから。あとは音楽を聴くこと。この「練習」と「聴くこと」の割合はプロの人でも見解が違いますが、とにかく音楽を聴くこと、お酒を飲みながらでも良いと思いますし、どんな状況でも聴く事が大事ですね。意識して聴いていなくても聴いたことは必ず体に染み込むはずですし、染み込んで沈殿したものしか出てこないと思うんです。ですから長く聴くということは大事ですね。

● さて、次は少し音楽から離れますが、音楽以外の趣味などはお持ちですか?

ボクシングジムに通ってました。手を怪我するんじゃないかと心配される人もいますが、バンテージ巻いてグローブつけてれば全然大丈夫。ただボクシングってやっているとそのことばっかり考えてしまうんですよ。趣味以上に関わりそうになります。でも楽器弾かなくちゃいけないのでその辺りのバランスが難しいですね。
あとは「食!」。お寿司を食べるためだけに房総半島まで行ったりします。食にはこだわりあります!自宅近くのお店もほとんどチェック済みですし、「F・E・J・E」バンドのメンバーとかと食べて飲んで、勝手に批評してます。ちょっと真面目な話をするとグルメなミュージシャンの方がクリエイティブな気がしますね。感覚が優れているというか。僕はそう思います。

● では、音楽に話題を戻してニューアルバムについてお伺いします。

このアルバムは昨年の10月18日、19日の2日間、名古屋の「スターアイズ」でのライブ演奏を合計4セット録音して、その中から良いテイクだけを厳選したライブアルバムです。スタジオ版には無い臨場感、グルーブ感、客席との一体感を体感してほしいですね。曲はオリジナル曲中心ですが、合計で作曲者が5人、アレンジャーが4人もいますからそれぞれの曲のバリエーションも楽しんでもらえると思います。 前から音が良いと思ってましたので、ぜひここでと。またエンジニアに東京から来て頂いて、満足できる音が録れたと思います。

● では最後にベーシストとして、また「D-musica」の代表として今後どのような活動を予定されていますか?

まず個人としては高田ひろ子(p)さん、村山浩(p)さん、古谷淳(p)くん、堀秀彰(p)くん、佐藤浩一(p)くん参加のピアノトリオ作品を録音しました。 それからベースソロアルバム第2弾をリリースする予定です。
レーベルとしては、おかげさまで「D-musica」で出したいという人がたくさん出てきています。こういう方たちの作品を定期的、積極的に出していきたいですね。
具体的には、まずジーン・ジャクソン(ds)をフューチャーしたピアノの堀秀彰くんのトリオがリリースされます。それから小池純子(p)さんがニューヨークで録音した作品をミックス、マスタリングして「D-musica」からリリースします。 メンバーはピーターワシントン(b)、グレゴリー・ハッチンソン(ds)にジミー・ヒース(ts)がゲストで3曲という豪華メンバーになっています。小池さんとはよく共演させてもらっているんですが、今回僕の活動に賛同してもらって「D-musica」でリリースすることになりました。

● 貴重なお話がたくさんお聞き出来ました。リハーサル後、本番前の貴重なお時間頂きありがとうございました。



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