「モード・ジャズの夜明けの前章となった一作」
★★★★☆ 2010/11/2
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By 駄らいぐまぁ -
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マイルス・デイビスが提唱したモード理論によるジャズの新たなコンセプトは、この歴史的な「KIND OF BLUE」に収められた「SO WHAT」と、「MILESTONE」によりその産声を上げた。が、モードという共通のキーワードを持ちながらも両曲から受ける印象は全く異なるものにある。前者がそのトーナリティを、その正に演奏しているモード(この場合Dm⇒Dドリアン)に依存しているのに対し、後者はドミナントモーションを強く現した形式(Gドリアン⇒Cミクソリディアンに進行する様式:更にBメロではAエオリアン=Cイオニアン、つまりAメロから更に4度転調)となっている。元々ベーシックとしている転調形式を受け継ぐこの曲は、モード理論に近づくための前章となっているような印象を受ける。実際、それぞれのアルバムに収録されている他の曲が前者は「Blue in Green」「All Blues」等のかなりコンテンポラリなアプローチをしているのに対し、本作はスタンダードナンバー、ブルーズとバップ、ハードバップの流れを汲んでいる。とは言え、ハードバップ期のレッド・ガーランドのピアノはさすがに卓越したグルーブ感を持っており、その筋の作品としても申し分ない。様々な逸話すらあれど、Jazzが新しい幕を開ける一つの節目に関わる作品として、避けては通れない一作だろう。